preface

ペリー来航から十五年、黒い畏怖が日の本を開いて明治を生んだ。物語は世も末1899年、文明開化は古き良き文化を解体し、日本は欧化強兵に邁進していた。ドッグイヤーで変貌する明治を尻目に、悠久の時を刻む村里があった。合掌造りに湯煙たなびく湯多村は、西洋にかぶれた隣町と対照をなし、古を偲ばせた。


ブラック✟レリジョン

大日本帝国安濃編

第一巻「湯多村の弥太郎」七章

第二巻「闇照天照」六章

第三巻「風雷双神絵巻」六章

第四巻「浮世の徒花」六章

語り手を宿した者は十一人

学者、文士、元軍人、鬼頭師、巡査、執行さん、船頭、やくざ、役者、学徒、女学生

主人公は西洋嫌いの英国帰り、ヒロインは芸者あがりの束髪くずし、安濃訛りのヒーローは涙もろい

ブラック✟レリジョン1

湯多村の弥太郎

cast

吉辰・角松

浪人風情

岸辺香苗

岸辺智和

栢惣衛

兜めぐみ

田輔

古暮正史

美崎狂壱

キース・ウェイド

小栗末吉

喜兵衛

ダキニ天

 

愛宕山

1867は幕末のピーク、狂った丁卯の年に愛宕山が火を噴いた。

あれから32年、神の怒りが冷めたにしては歪な溶岩はどす黒く、熊も立ち止まる漆の森を抜けると、見通しのよい杉林が出口を閉ざす。愛宕山には何かいる。希代の博物学者、南方熊楠なら迷わず遭難を選び、笑顔で森をさまよい収集に明け暮れるだろう。深山には噴火の爪痕を癒やす菌類に、人懐っこい蛾が群れていた。

 

Spring has come to the 湯多村

白い目をした浮世から逃れ

安濃くんだりまで落ちのびて半年

山里の生活は一向に慣れず

死を意識してか、儚い虫に抵抗を感じ

硫黄泉の湯煙は目に沁みるばかりで

未だEXITの神々しい光は見えないが

屋根裏部屋の小窓から春が香ってきた

麻痺したはずの神経が心なしか

ほぐれた気がして我知らず

落涙の床に家族の名を刻んでいた

Sharon  Lisa